01.6:35

 クロウの朝は早い。遊星やブルーノが徹夜で作業しないかぎりは、おそらくポッポタイムで一番の早起きだ。それは、まだ終っていない伝票の整理を配達時間までにしなければないことが多いからなのだが、ベットから上体を起こしたところでカレンダーを見つけ、クロウはその必要がなかったことを思い出す。
 少し離れた壁にかけてあるにも関わらず、一目でわかるよう、今日の日付にでかでかと打たれた赤丸。

「……そっか、今日は配達休みしたんだっけ」

 ここ最近、WRGPへの出費が多かったせいで仕事を多めに取っていたクロウだが、それを逆に遊星に咎められてしまい「たまには休んだらどうだ」という言葉のままに入れてしまった休日。本当はこっそり宅配の仕事を入れてやろうかと思ったクロウであったが、こういうときだけは目の届く遊星が怖くて結局折角の休日を満喫することにした。大体の予定はもう立ててあるが、それにしては早く起きすぎてしまった。だが、二度寝をする気もなれずクロウはベッドの上で一人頭を悩ませる。

「お、そうだ」

 そして、ぽんと手を打つと、クロウはすぐにベッドから降り立った。





 ふいに鼻腔を掠めた匂いに、ジャックは重い瞳を開ける。バターが焦げる香ばしい匂い。その匂いに釣られるように、ジャックはベッドから起き上がると、ふらふらと台所まで歩いていく。
 そして、匂いの先をたどっていったジャックが見たものは、それもう立派な朝食だった。男四人では狭苦しいダイニングに並ぶのは食パンとトースター、できたてでまだ湯気の出ているスクランブルエッグと焼きたてのベーコン、本当に飾り程度に盛られたサラダ……ジャックがその場で固まっていると、キッチンからオレンジの頭が顔を出す。

「よう、ジャック。ずいぶん早えじゃねーか」
「……クロウ、まさかとは思うがお前が作ったのか、これを」

 エプロンまでしてキッチンに立っているクロウに、ジャックは怪訝そうな顔でそう尋ねる。クロウは今日、朝食の当番であっただろうか。いや、それ以前にここまで気合の入った朝食をクロウが作るのは珍しい。確かに、ポッポタイムの面々で一番料理ができるのはクロウではあるが、大抵は主食と大皿料理という形が多かっただけにジャックは面食らうしかない。

「おう、今日は早く目覚めちまったからな。たまにはいいだろ、こういうのも」
「ふん、あんまり慣れないことをして驚かすな」
「なんだよ、お前の牛乳とコーンフレークよりは全然まっしだろーよ」

 そうぶつぶつ言いながら、また台所に戻るクロウを見届けた後、ジャックはスクランブルエッグを指でつまみ、口に入れると一言。

「クロウ! このスクランブルエッグ、塩が強いぞ!!」
「つまみ食いすんじゃねぇ!!」